-あの頃の僕-

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【恋バナ】あの子からの卒業(実話)その3

 

【恋バナ】あの子からの卒業(実話)その2 - ストレスフリーな日常を!

 

 

雨が降っていた。

僕らは走っていた。

少し息を切らせてドアを開ける。

完全に間に合わなかった。

 

僕らは学校の行事で遅くなり、塾の授業に間に合わなかったのだ。

 

 

 

僕は頭が悪いから、塾に通っていた。

実際に通っていても、学校の成績が上がることはあまりなかった。

 

 

「お前らどうした?授業とっくに始まっているぞ!!」と塾長の、通称やっさんが慌てて近づいてきた。

 

「今日、学校の行事で残っていたので遅くなりました。」と僕は呼吸を整えながら説明した。

 

「今日の受ける授業はなんだ?」と聞かれ

「理科と社会です!」と返すと

「社会は諦めろ!今度、補習をやるから参加しなさい」と言われた。

「理科はこれからの授業があるが、ちょっと待ってろ…んー、SクラスとAクラスか…」とやっさんは何か考えていた。

 

「お前ら、確か理科と社会はBクラスだったな?」とやっさんが確認してきた。

僕らは頷いた。

「お前はSクラスで理科を受けろ!S太とT男はAクラスで理科を受けろ」とやっさんに指示された。

 

僕は「Sクラスですか?」驚きを隠せなかった

 

僕の塾では、クラスが5段階あって、

上からS.A.B.C,Dと分けられていた。

 

僕は、ずっと最下位のDクラスに居座っていたが、3年の夏期講習で下克上を見事に達成し、Bクラスまでランクを上げていた。

 

全ての教科で成績を上げるために、先生達と僕はある約束をしていた。

「どの教科でもいい!M子のテストの点数を上回れ!」先生達は僕とM子が付き合っていた事を知っていた。

「わかりました。卒業までにやってみます。」と約束した。

 

いまいちやる気のなかった僕に、先生が目標を立ててくれた。

その時、「見返してやれ!」と先生達に言われたので、

僕は、もしかして頭が悪いから振られたのかも…と思って頑張ろうと決めたのかもしれない。

 

僕は暗記はなぜかできる方だった。

昔からゲームが好きで、特にRPGを好んで遊んでいた。

洞窟にある宝箱の中身等を、ほぼ覚えていた。

 

それが勉強にも役に立ち、5教科の理科と社会の点は取れるようになった。

 

 

 

そして、やっさんと一緒にSクラスに入る。

やっさんが担当の先生に事情を説明する。

担当の先生は太っていたので、通称ごっつぁんと呼ばれていた。

僕と約束をした先生の1人で、僕がレベルを上げているのも当然知っていたし、何より仲も良かった。

 

 

「わかりました。彼なら問題ないでしょう。空いてる席に座りなさい。」と、ごっつぁんに手招きされ、空いてる最前列に座った。

 

 

Sクラスの授業は、Bクラスとは違い授業のスピードが早かった。

しかし普通についていけてると思い、自分でも驚いていた。

その時。

 

 

 

ガチャ!

 

扉が開く音がした。

「すいません、生徒会でおそくなりました。」

久しぶりに懐かしい声を聞き、後ろを振り返ると

M子が立っていた。

僕は驚いた。

しかしM子は、Sクラスに前からいた為、ここに来るのは当然だった。

 

僕は逃げ出したくなったがそんな事は出来ない。

だから同じ空間に居るだけ!

と、自分に言い聞かせた。

 

「事情は聞いてるよ。空いている席に座りなさい」と、ごっつぁんが言うと。

 

「はい!」と返事をするM子は空いてる席を探していた。

 

僕は既に前を向いていた。

 

 

 

足音が近づいてくる…

ガタ!

 

すぐ近くで椅子を引く音がした。

 

 

!!??

 

 

 

え!?

僕は驚き小さな声が出てしまった。

同じ机にM子が座っていた。

 

 

なぜ?隣にM子が?

同じ机に座わる?

 

 

僕は動揺していた。

 

後ろを見ると、最前列と最後尾、後ろの席が何席か空いていた。

 

 

僕の塾では、会議室にあるような長い机を使用しており、2人〜3人一緒に座って授業を受ける。

 

 

僕は壁側が好きで、端っこに座っていた。

 そこに、M子は一つ椅子を空けて通路側に座っていた。

 

 

後ろの方では、同じ学校の友人達が、

ぷっ!っと笑いを堪えていた。

 

きっと後で茶化されるのだろう…

そんな風に思いながら授業を受けた。

 

 

最初は緊張しすぎて、問題を半分聞き取れないこともあったが、次第に冷静さを取り戻していた。

 

僕はM子に負けないように頑張ろうと授業に取り組んだ。

 

授業は今までの復習で、ごっつぁんが問題を出してそれを解いたり、説明したりする。

必ず、出来た人と言われ正解した人は手を挙げるシステムだった。

そして解説してくれたり、わかりやすく教えてくれる授業だった。

 

 

僕はこっそり、M子と僕が何回手を挙げたかをチェックしていた。

 

チャイムが鳴る。

休憩の時間になった。

 

各々、トイレや身体を伸ばしたり、友達と話していた。

僕は、友達と話していたが、Sクラスの数人に絡まれた。

 

「とてもいい席だね(笑)」

「また付き合い始めたの?(笑)」

「やっぱり2位は違うよな?(笑)」

等と、嫌みも含まれていた言葉を僕は無視していた。

どうも思わなかった。

今は、M子を見返すチャンスだと思い休憩明けの授業に集中しようと思っていたから。

 

 

そして、ごっつぁんが教室に入ってきて授業が開始された。

 

僕は好調に問題に正解し、M子より正解率を重ねていった。

 

すると、ガサゴソとペンケースの中を探しているM子が視界に入った。

 

そのあとシャーペンの裏側の小さな消しゴムを使ってノートの文字を消していた。

消しゴムを失くした様子だった。

 

僕は、少し音を立てて消しゴムを、M子と僕の机の真ん中に置いた。

 

M子はそれに気がつき

授業中だったのでM子は軽く会釈をし、僕の消しゴムを使った。

 

M子が消しゴムを使い終わると、同じ場所に消しゴムを置いた。

僕も消しゴムを使い、終わるとまた同じ場所に消しゴムをおいた。

 

 

なんか、勝手に競っていたのがバカバカしく思えた。

どうでもいい、もういいや。

僕はこの日から、M子の点数やで、きを気にするのをやめた。

ただただ普通に授業を受けた。

 

 

消しゴムをM子が使って、

僕が使って、

M子が使って、また使って…

 

必ず消しゴムは真ん中、つまり2人の間に置かれるようになった。

 

僕は、このやり取りを微笑ましく感じていた。

 

消しゴムが繋いでくれている…そんな気がしていた。

 

 

 

 

そして授業の終盤。

机でグループを組んで話し合い、問題の答えを説明する…そんな問題が出された。

僕は一瞬、ごっつぁんを恨んだ…

 

 

周りは相談し合っている。

 

 

僕とM子はうつむき、会話をすることが出来なかった。

でも何かしなくては、と思い、教科書を見ながらM子方に身体を傾けた。

M子も同様な姿勢だった。

 

すると突然。

 

 

 

「すごいね」と呟いてきた。

僕は「何が?」と返す。

「………」M子は黙っている。

「………」僕も黙る。

「ありがとう……消しゴム…」

「うん…」

そう会話して話し合いが終わった。

 

時間ないから1グループだけ回答してと言われ。

一番前にいたからか、僕らが指名された。

 

僕らは問題を話し合っていない。

M子は下を向いている。

完全に僕に回答を投げたのだった…

 

 

 

ずるいなと思いながら、回答を自分なりに答えた。

「回答としては正解!」と言われたところで授業が終わった。

 

恐らく、話し合いなんかしていないことがバレていたのだろう。

 

 

授業が終わり、僕は荷物をまとめ

やっと解放された!そう思いながら逃げるように教室を後にした。

 

外に出ると、Nヒロ達が待っていた。

一足先に授業が終わった終わったらしい。

Nヒロは生徒会で遅くなってAクラスで授業を受けていたようだ。

 

 

 

 

雨は小雨になっていた。

今日のことやSクラスの授業の事など話して帰っていた。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして僕は

「あ!傘忘れてきた。」と思いだした。

「何やってんだよ!小雨で傘がいらないから忘れたなー!バカだなー」と笑われた。

「取ってくるから先に帰ってて!追いつかなかったらそのまま帰っていいから」と言い走り出した。

「とりあえずまた明日学校でな!」と言われ、Nヒロ達と別れた。

 

 

 

途中消しゴムをしまい忘れたことを思い出して教室にも寄ることにした。

 

 

塾に戻ると、まだ数人の生徒が先生に質問したりして残っていた。

ごっつぁんが「帰ったんじゃなかったのか?」と話かけてきた。

「忘れ物しました」と少し息を切らせながら言った。

「今日良く出来てたぞ!ほぼ全問正解だ!次のテスト頑張れよ」とほめてくれた後

「でも、最後の問題はちゃんと話し合わなきゃダメだぞ!」と少しニヤニヤしながら言ってきた。

「あの状況知ってて言ってるでしょ?やっさんに泣きつくからね!」と、ごっつぁんのぷよぷよしたお腹をつかんで言い放った。

「それは勘弁してくれ(笑)」と2人でじゃれ合った。

 

 

「おっと、忘れ物取りに来たんだったな、気をつけて帰れよ!」とごっつぁんに言われ傘を取って塾を後にした。

外に出るとさっきよりも雨が少し強くなっていた。

傘を使わなくても帰れないこともないが…走ったらそれなりに濡れそうだった。

僕はNヒロ達に追いつくことを諦めて1人で帰ろうとした。

すると後ろから、服を引っ張られた。

 

 

 

 

 

その4に続く