-あの頃の僕-

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【恋バナ】あの子からの卒業(実話)その4

 

【恋バナ】あの子からの卒業(実話) - ストレスフリーな日常を!

【恋バナ】あの子からの卒業(実話)その2 - ストレスフリーな日常を!

【恋バナ】あの子からの卒業(実話)その3 - ストレスフリーな日常を!

 

 

 

 

振り向くと少し濡れたM子が立っていた。

「帰ったんじゃないの?」M子は僕に訪ねた。

「忘れものしたから戻ってきた。」と答える

「そっか…」M子はなにか言いたげにしていた。

なぜか普通に会話出来ている自分に驚いた。

 

M子は傘をもっていなかった。

 

 

 

 

屋根の下に入り少し話をした。

「消しゴムありがとね」

「おう!お役に立てたなら良かったです」

「助かったよ」

「消しゴムぐらい持ってこいよなー(笑)」

「今日学校で失くしたの!急いでたから買うの忘れたの」

「忘れん坊だな(笑)」

「自分だって忘れ物して取りに戻ってきたんでしょ?(笑)」

「そうでした(笑)」

久しぶりの会話なのに、違和感なく話す2人だった。

 

 

 

 

 

 

「帰らないのか?」僕はM子に訪ねた。

「帰るよ……でも持ってきた傘が見当たらなくて…別館にも無かったし…間違って持っていかれちゃったかな?」M子は答えた。

「家には他の傘ないの?」と聞くと

「あるよ!今日は古い傘もってきたんだ」とM子は答えた。

 

 

 

僕は、緊張とか、気まずさを感じることはなかった。

なぜだか分らなかったが、M子の前で今、普通でいられることで自分がいつもよりたくましく思えた。

 

 

「じゃあまたね…」とM子は僕に言った。

「だから、忘れものしたって言ったじゃん」

「え?とってきたんでしょ?」

「いや…だからとりにきた!」

「じゃあ、とってきなよー」

「目の前にある!」

「変なの?何それ(笑)」

「はぁー、何でこんな時に鈍感なんだよ!」ため息を吐きながら僕は言った。

 

 

 

「ほら!行くぞ!」僕は傘を開きM子の手を引っ張った。

「え?ちょっと!え?なんで?」M子は動揺しながらも僕の傘の中に入った。

後で僕は、自分の行動を心底キザなかっこつけだと思った。

 

 

 

 

「もう遅いし送って行く!傘は家にあるんだし、誰かが持って行った可能性が高い。遅くなったら親が心配するし、とりあえず今日は帰ろう。」僕は冷静に説明した。

「うん……ありがとう…」M子は下を向きながら呟いた。

「そうゆうところ、……当……き…」M子はさらに呟いた。

 

「ん?なんか言った?」僕は少し聞き取れなかったが、ドキドキしてしまった。

 

 

 

 

少し雨の降る帰り道、僕は左手に傘を持ち

僕の左腕には、M子がしがみついていた。

11月の肌寒さは、2人の体温で感じなくなっていた。

 

僕たちは、周りに見られないように、遠回りして帰り道を歩いた。

 

「最近成績良いね!今日もほとんど正解してたね!」

「そう?M子に比べたらまだまだだよ。」

「理科と社会の点は私より上でしょ?」

「そうなの?」僕は、先生たちとの約束を頭によぎらせていたが、そんなことは口が裂けても言えないと思った。

 

「最近変わったねー」M子は前を見て喋った。

「なにが?成績?」僕が返すと。

「成績だけじゃないよー、何かあったの?」

「いや別になんもないよー」

「そう?好きな子でもいるの?」

「………」

「あー!いるんだ」

「別に…」

僕はどう返していいかわからなかった。

 

「私さ、周りを子供だなって思うことあって、前まで自分は大人なんだって思ってた…でも自分が一番子供だなって最近思うようになったの。」M子が急に真面目に話始めた。

「どしたの?急に?」僕が返すと

「人の上辺だけしか見てなかったって。」M子は遠くを見つめた。

「でもさ、それに気がついたなら変われるんじゃない?」僕も真面目に返した。

「変われるのかな?」

「自分次第だと思うけど…まだ大人じゃないんだし変われると思うよ。」

「変われたら良いな。」

「応援するよ!頑張れ!って。」

「じゃあちゃんと見ててね。」

「わかった」

真面目な表情で話しあった。

 

 

「あ!そうだ、忘れるところだった。」M子が唐突にかばんをゴソゴソと何かを探していた。

「忘れん坊だな(笑)」僕がふざけると

「それはそっち!はいこれ!」M子が手を差し出す。

「あ!消しゴム!忘れてた(笑)」僕たちが使った消しゴムを手渡された。

「置きっぱなしだったから拾っておいた。」

「そっか」

 

僕は今日この消しゴムに何かを繋いでもらった気がした。

 

「あげる!」僕はM子に消しゴムを手渡した。

「いいよ、ないと困ると思うし、私買うから。」M子に消しゴムを突き返された。

僕はちょっと考えた。

 

「M子、ちょっと傘持ってて」M子に傘を渡す。

「うん、どうしたの?」M子は不思議そうにしていた。

「ちょっと待ってて」

僕は消しゴムに爪を差し込み、半分に消しゴムを割った。

 

「ほら!これでお互い困らないだろ?」僕は消しゴムの半分をM子に渡した。

「ははは、考えたね!嬉しいありがとう」M子は少しはしゃいでいた。

他の人から見たらただの消しゴム。

だけど僕にとっては、なんか特別な消しゴムに思えた。

 

今日こんなことになったのも消しゴムのおかげかな?そんな風に感じながら消しゴムに感謝した。

 

 

 

M子の家の近くまで帰ってきた。

色んなことを話した。

受験のことや学校のこと。

 

「いつもより遠周りしてるのに、帰り道が短く感じた。」M子が少しさみしそうな顔をした。

「そっか、雨やんだな」

「うん、やんだね」

雨は上がり、僕は傘をたたんだ。

「送ってくれてありがとう!もうそこだからここで大丈夫…」

「うん、風邪引かないようにね。」

「ありがとう。じゃあ…バイバイ!」

M子が手を振り歩き始めた。

 

 

僕は、バイバイとM子が発した言葉に悲しさを感じた。

 

 

 

 

「M子!!」

僕は少し大きい声で呼び、M子の元に駆け寄った。

「どしたの?」M子は驚いていた。

僕は笑顔でM子を見つめた。

「やっと顔見てくれたな!」僕が言うと

「うん、ちょっと照れくさくて」とM子が視線をそらす。

「前に同じこと言われたよ」と僕がすかさず言うと

「うん、覚えてる、生徒会の演説練習の帰りに言った…覚えてたんだね。」

 

「自分で言ったのにね(笑)」M子は少しうつむき笑っていた。

そんなM子を見て僕は、本当は強がってるだけで、実は弱いんだなと思った。

思ってから身体が動くまでが早かった。

 

 

 

!?

 

 

 

 

 

 

僕はM子を抱きしめた。

M子は何も言わず僕の腰に手をまわしていた。

 

「バイバイじゃない…またな!」耳元で僕は呟いた。

「うん、そうだね、またね!だね」M子も耳元で呟いた。

 

 

 

M子を離すともう一度僕に手を振り歩きだした。

僕も家に向かって歩き出した。

 

すると

「ねぇ!」M子が叫んだ。

「何だ?」僕は振り返る。

「携帯の番号変わった?」とM子が訪ねた。

「メアドは変えたけど、番号は変わってないよ!」

「私もメアド変えたけど、番号変わってないから!ショートメールでメアド送ってもいい?」M子が携帯電話を手に持ってぶんぶん手を振っている。

「もちろん!」僕も携帯を片手に手を突き上げた。

 

そして僕は、M子が曲がり角に消えていくのを見届けてから歩き始めた。

 

 

 

帰り道、僕は色んなことを考えていた。

意外と僕はM子のことわかってなかったし、見えてなかったんだなって思った。

なんか全然違うし、本当は強がっているだけで、ものすごく弱かったんだなって。

それにあの時のM子じゃなかった。

変わっていたんだ。

そこに何故気がつかなかったんだ。

今までのM子は、僕が勝手に作り出した幻想だったんだ。

ちゃんと向き合っていたらよかったな。

 

 

僕は自分に落ち度はないと思っていた。

勝手に幻想を作りだした自分に腹が立った。

 

 

M子からショートメールでメアドが送られてきた。

M子のアドレスを登録して風邪引かないようにね!おやすみとメールを送った。

その日M子から返信はなかった。

 

 

 

僕は決めた。

ちゃんと向き合うと。

意地を張るのもやめると。

無理にかっこつけず、ありのままの自分で接しようと。

 

 

 

そして僕が作り出した幻想の…あのこから卒業しよう。

 

 

 

僕たちが空いた穴を埋めるにはきっと少し時間がかかる。

やり直さなくてもいい、

でもせめて、普通にいられるように。

少しずつでいいから時計の針を進めていこう。

 

 

 

あの子からの卒業-完-

次回は続編を書いていきます。